ネラックスのインスピレーションになった加重ブランケットと深部圧刺激の話。

睡眠中に目の上に適度な重さをかけることが、睡眠の質を向上させる可能性があります。

 

この効果は、加重ブランケット(Weighted Blanket)の使用に関する研究からも示唆されています。加重ブランケットは、適度な重さを持つ毛布で、主に不安や不眠の軽減を目的として使用されます。

 

その効果の一因として、深部圧刺激(Deep Pressure Stimulation)が挙げられます。

深部圧刺激とは、体に適度な圧力を加えることで、リラクゼーション効果をもたらす方法です。この圧力は、副交感神経系を活性化し、心拍数や血圧の低下、ストレスホルモンであるコルチゾールの減少を促します。これにより、リラクゼーションが促進され、入眠が容易になると考えられます。

目の上に重さをかけることは、顔面の特定部位への深部圧刺激を提供し、同様のリラクゼーション効果をもたらす可能性があります。特に、目の周囲には多くの神経が集まっており、適度な圧力がこれらの神経を刺激し、リラクゼーションを促進することが考えられます。

ただし、目の上に重さをかけることに関する具体的な臨床データは限られています。そのため、個人差や使用方法に注意が必要です。適切な重さや素材を選び、長時間の使用を避けるなどの配慮が求められます。

加重ブランケットの効果に関する研究として、以下の文献があります。

  • Chen, H.-Y., Yang, H., Chi, H.-J., & Chen, H.-M. (2013). Physiological effects of deep touch pressure on anxiety alleviation: The weighted blanket approach. Journal of Medical and Biological Engineering, 33(5), 463–470.

この研究では、加重ブランケットの使用が不安の軽減に寄与する可能性が示されています。目の上に重さをかけることも、同様のメカニズムで睡眠の質を向上させる可能性がありますが、さらなる研究が必要です。

深部圧刺激(Deep Pressure Stimulation、DPS)とは、体の広範囲にわたって均一な圧力をかけることでリラクゼーションや安心感をもたらす手法のことを指します。この技術は、感覚統合療法やリラクゼーション技術の一環として活用されており、不安の軽減や自律神経の調整に効果があるとされています。


深部圧刺激の仕組み

深部圧刺激は以下のような生理的メカニズムで効果を発揮します。

  1. 副交感神経の活性化
    深部圧刺激を受けると、副交感神経が優位になり、心拍数の低下や呼吸の安定、血圧の低下が促されます。これにより、体が「休息モード」に入り、リラクゼーション状態が促進されます。

  2. セロトニンとオキシトシンの分泌促進
    均一な圧力が脳にリラックスの信号を送り、セロトニンやオキシトシン(幸せホルモン)と呼ばれる神経伝達物質の分泌が増加します。これにより、安心感や幸福感が得られ、不安やストレスが軽減されます。

  3. コルチゾール(ストレスホルモン)の減少
    深部圧刺激はストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑えるとされており、ストレス管理にも効果があります。

  4. 感覚処理の安定化
    神経系が圧力刺激を受け取ることで、感覚過敏や感覚鈍麻を緩和する効果があると考えられています。これが特に発達障害や感覚統合障害のある人々に効果的です。


深部圧刺激の実践方法

深部圧刺激は以下の方法で実現されます。

  1. 加重ブランケット
    均等に重さのある毛布を使用します。加重ブランケットは、体全体を包み込むように圧力をかけ、深部圧刺激を提供します。通常、体重の10~15%の重さが適切とされています。

  2. ハグや体圧用具
    ハグ(抱擁)や、専用の圧力提供デバイス(チェアやベストなど)も深部圧刺激を提供するために用いられます。

  3. 手技療法(マッサージ)
    マッサージや指圧のように、手で直接体に圧力をかける手法でも深部圧刺激を実現できます。


深部圧刺激が効果を発揮する状況

深部圧刺激は、以下のような問題や状況で有効とされています。

  1. 不安やストレス
    深部圧刺激は、副交感神経を活性化してリラックス状態をもたらすため、不安やストレスの軽減に役立ちます。

  2. 不眠症
    寝る前に深部圧刺激を加えることで、心身の緊張がほぐれ、より深い睡眠に誘導されます。

  3. 発達障害(ASDなど)
    自閉症スペクトラム障害(ASD)の人々の中には、感覚過敏や不安を抱える人が多く、深部圧刺激が落ち着きを提供するのに役立ちます。

  4. パニック障害やPTSD
    パニック発作や過去のトラウマからの過剰な反応を軽減する効果も期待されています。

  5. 集中力の向上
    リラクゼーション効果により、過剰な感覚刺激を抑え、集中力を高める効果が報告されています。


負担について

深部圧刺激は体に負担をかけるものではありませんが、圧力のかけ方や時間には注意が必要です。

  1. 適切な重さ
    過度な重さは体への負担や血流障害を引き起こす可能性があるため、個人の体重や体格に合わせた調整が必要です。

  2. 使用時間
    長時間にわたり強い圧力をかけると、圧迫感や不快感を感じることがあります。短時間から始めて様子を見ながら調整することが推奨されます。

  3. 体調への配慮
    呼吸器疾患や循環器疾患のある人は、深部圧刺激の適用に注意が必要です。医師の助言を受けることをお勧めします。


参考文献

  • Grandin, T. (1992). "Calming Effects of Deep Touch Pressure in Patients with Autism, College Students, and Animals." Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology.
  • Chen, H.-Y., et al. (2013). "Physiological effects of deep touch pressure on anxiety alleviation: The weighted blanket approach." Journal of Medical and Biological Engineering.

深部圧刺激は、体の自然な調整機能をサポートし、リラクゼーションやストレス軽減に寄与する効果的な手法であり、適切に活用することで多くの人に恩恵をもたらします。

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